優しい父親になりたかった。
自分の父親は家で暴力を振るったり、大声を出したりする人だったからだ。
そんな父親にはならないようにと思ったが、結局は同じ道を着実に歩んでいる最中だ。
何でなんだろう。どうして優しくなれないのだろう。私の場合、結局は自分で自分を生かすのに精一杯で、自分以外の存在に目を向ける余裕なんて欠片もないのだ。すぐに溢れかえってしまうコップに自分以外の誰かを入れる隙間はない。
こんなはずじゃなかった。でも、こんなはずなんだよ。これが現実。
優しくなれないのなら、傷つけてしまうのなら、私が父親として唯一できることは子どもと物理的に離れて暮らすことだ。それ以外の方法は今のところ見つけられていない。
離れてしまえば、一人で暮らすのであれば、誰かを物理的に攻撃することは不可能だ。
故郷に戻ろうと思う。自分の実家の近くに住もうかな。それか今まで行ったことのない場所。でも、知らない場所は私にとってはハードルが高いので、やっぱり故郷のような住み慣れた土地の方が初めての場所に不安を感じやすい私にはいいのかもしれない。
子どもの笑い声や泣き声を聞くだけで胸が張り裂けそうになる。子どもが私のそばに来てくれるのはとても嬉しいし、そんな時間も子どもの時だけとはわかってはいる。しかし、現実問題として、私には子どもを受けとめる力がない。